営業のPDCAサイクルとは?事例をもとにポイントを紹介

業務進捗や目標達成に向けた取り組みの際に、企業や組織などさまざまな場面で活用されている技法が「PDCAサイクル」です。 この記事では、営業活動におけるPDCAサイクルの活用方法や、利用時のコツについて解説します。


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営業活動のPDCAサイクル

PDCAサイクルとは、Plan(計画する)、Do(実行する)、Check(評価する)、Action(改善する)という流れを繰り返す方法のことを指します。

継続的に目標達成へ向け、プロセスなどの改善を図っていくことができる点が特徴の技法です。

ここからは、営業活動におけるPDCAサイクルのそれぞれの役割や活用方法について解説します。

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Plan(計画する)

Plan(計画する)では、目標達成や改善のための具体的な数値目標や期限の設定を行います。

目標であればどのような内容のものを設定しても問題ありませんが、重要なのはあいまいにならないように「数値」を盛り込むことです。

数値を盛り込まなければ、効果や成果を測定することができないため注意してください。

Planでは、ひとつの目標だけでなく、複数の計画を立てることも可能です。

たとえば、架電数や顧客訪問数、売上、有効商談数、商談数など、営業活動におけるさまざまな目標設定に活用することができます。

目標達成のために必要なことをPlanに盛り込むことで、最終目標の達成に向けてどのようなことを達成していくべきかが明確になるでしょう。

そのため、Planを設定しておけば、漠然とした感覚ではなく計画をもとに、目標達成に向けて必要な業務に集中できるようになります。

Do(実行する)

Do(実行する)では、Planで立てた計画を実際に実行します。計画どおりに進まないこともあるため、つまずいたポイントや感じたこと、不明点などを記録しておくと良いでしょう。

また、計画を実行するために期間を細分化し、直近の課題に落とし込んで実行することで「今何をすべきか」が明確になります。

たとえば「半年間の売上〇〇円達成」を計画しているのであれば「3ヶ月間で〇〇円、1ヶ月間で〇〇円」と絞り込むことで、進捗達成の過不足が把握しやすくなるでしょう。

Check(評価する)

Check(評価する)では、定めた期間内に取り組んだ業務や目標の達成率などを検証し、評価していきます。

ここで重要になるのは、Planで立てた目標に未達成の場合だけでなく、達成した場合も振り返りを行うことです。

達成できた場合は、成功要因となったポイントを抽出し、今後の業務に生かすことで成果につなげられるようになります。

一方で、未達成だった場合には、課題点や改善点を挙げ、原因や改善方法について検討しましょう。

Planは、経験則や過去のデータに基づいた計画を立てることが多い傾向にあります。Checkでは、Planで予想した計画どおりに進行できていたか、達成に向けたプロセスについても効果測定を行う必要があります。

Action(改善する)

Action(改善する)では、Checkで抽出した課題の改善策を実際に行動に移していきます。成功している場合も、さらなる成功を目指していくことが大切です。

また、なにを優先して改善すべきかを取捨選択することも欠かせません。「継続し続ける」「やめる」「改善し、再挑戦する」の3つの選択肢を念頭に、Checkで判明した課題について検討しましょう。

成功したポイントについて継続判断することは簡単ですが、計画未達成となった場合に継続すべき項目を見つけ出すのは難しいものです。

そのため、PDCAサイクルを何度も回し、効果測定を交えてトライ&エラーを繰り返しながらブラッシュアップしていくと良いでしょう。

営業活動におけるPDCAの実施事例

営業活動におけるPDCAサイクルは、ちょっとした工夫で成否を分けます。正しい手法で行っているにもかかわらず思うような成果につながっていない場合は、手順のみならずフローごとの手法を見直してみましょう。

ここでは、営業活動のPDCAについて、実施事例に触れつつ失敗・成功につながるポイントを解説します。

PDCAの失敗事例

PDCAを意識していても効果があらわれない要因は、目標や課題が曖昧なことです。目指すべき指標や解決すべき課題が明確でなければ、具体的な解決策は見出せません。

従業員の立場からしても、曖昧な目標や課題で「改善しろ」と指示されるのみでは、当事者意識が芽生えにくくなります。

目標や課題が明確ではない場合に起こる失敗事例を、それぞれ紹介します。

PDCAの目標設定が曖昧なケース

売上が伸び悩んでいるA社の営業部では、課題が新規顧客の獲得が滞っている点にあると仮説を立て、対策することとなりました。上長が営業担当者に出した指示は、「新規顧客を1社でも多く獲得してこい」のみです。

具体的な数字や方法の指示はなく、非常に曖昧な目標設定でした。結果、現場では課題解決のためにどのような施策を取り入れるべきか、方針すら決まらないまま営業をせざるを得なくなりました。

方向性が曖昧では、効果的なアプローチは行えません。新規顧客が多少増えたとしても、もともと目標が曖昧な状態では「課題解決できたのか分からない」ため、取り組みに対する評価もつけにくいまま失敗に終わってしまいます。

課題を明確にできていないケース

B社は、売上が低迷している商品のバージョンアップを行い、訴求力の向上を狙いました。ユーザーのニーズを可能な限り反映させようと、B社がまず行ったのが、既存顧客に対するアンケートです。

どのような点を改善してほしいか、どのような不満があるかを聞き取った結果、多くの意見を得られました。しかし、あまりに多様な内容だったため、商品開発に反映させることができませんでした。

失敗の原因は、多くのユーザーニーズを満たそうとした結果、どの意見を取り入れるべきか決めかねたことです。

アンケートでは、あるユーザーが「機能が少ない」と評価している一方で、あるユーザーは「機能が多すぎると使いにくくなりそうだから、丁度良い」と評価していました。

どの意見を優先すべきか、何が重視すべき課題なのか判断できないまま、PDCAサイクルを回してしまうと失敗に終わってしまいます。

PDCAの成功事例

PDCAサイクルを安易に回すのみでは、形骸化するだけに終わってしまいます。重要なのは、あくまでPDCAは手段のひとつと考え、何のために行うのかを意識して取り組むことです。

PDCAを効果的に活用できている2社の例を紹介します。

営業ノウハウを標準化したケース

C社は、営業活動の大まかなマニュアルはあるものの、営業のかけ方は個々に任せている状態でした。そのため、営業担当者ごとにアプローチ方法やクロージングに差がありました。

解決策として、社内で成績の良い従業員の営業方法をフロー別に分けて、分析することから始めました。成績が振るわない従業員と比較したところ、成績の良い従業員は架電のタイミングなどこまかな部分に違いがあることが分かりました。

分析結果にもとづいてC社が行ったのは、営業ノウハウの標準化です。架電のタイミングなどこまかな部分もマニュアル化して、効果的にアプローチする方法、クロージングへの持ち込み方などを全営業担当者に共有しました。

結果、営業担当者による成績のバラつきは軽減され、売上増にもつながったのです。

定量的な情報を活用したケース

D社は、自社が抱える課題を見つけるために、顧客がどの段階で離れているかを定量化しました。たとえば資料請求のみで終わったのは何%か、特典つきの初回購入のみで終わったのは何%かと、セグメント別にデータを定量化する方法です。

集計結果をもとに、自社の弱点を洗い出したD社は、「商談から受注までの間に課題がある」と判断しました。翌月までに受注率を5%上げると明確な目標を掲げ、セグメントごとの施策を考えた結果、目標以上の成果を得られました。

営業活動のPDCAのコツを知ろう

営業活動でPDCAサイクルを回していく際に失敗を防ぐためには、コツを押さえたうえで活用することが大切です。ここからは、PDCAサイクルを営業活動で活用する際のコツや注意点について紹介します。

目的を明確にする

まずは、PDCAサイクルを活用する目的を明確にする必要があります。「PDCAサイクルを回すこと」が目的にならないように、改善したいポイントや業務効率化の実現、目標達成率の向上など、明確な目的を定めておきましょう。

また、PDCA導入の目的は、Plan同様に数値化した目標を設定するのも効果的です。抽象的な目的や目標を設定してしまうと、Checkでの測定項目が広範囲にわたり、改善点が絞れなくなる可能性があります。

とくに、導入したばかりの頃は「まずはこの課題を解決する」という単一の目的設定からはじめて、徐々に適用範囲を拡大していくと良いでしょう。

原因を探る

PDCAサイクルが形骸化して思うように効果を発揮しない原因のひとつが、結果の分析を表面的な部分のみで終わらせていることです。結果を分析するときは、本質的な原因を探る必要があります。

たとえば商品が目標どおりに売れなかった場合、「トレンドが終わったから」「高かったから」など表面的に分かる情報だけを見ていても、具体的な解決策は浮かびません。まずは商品を売るためのフローや目標を分解して、どの部分に原因があったのかを探ることが重要です。

商品の売上は、単価、新規顧客数、成約率、返品率の4つが関わっています。単価が安くても新規顧客数が増えなければ、新たな売上にはつながりません。かつての購入者が全員リピーターになるとは限らないためです。

また、新規顧客数を増やしても、返品率が高ければ実質的な売上は伸び悩んでしまいます。営業フローや目標のどの部分に問題があったのか、設定した目標と結果にどのような乖離があったのかを詳しく分析していき、本質的な問題を見つけ出しましょう。

具体的な数値で示す

PDCAサイクルは、目標設定においても結果の分析においても、具体的な数値が不可欠です。客観的な視点で施策を行うためには、可能な限り目標や結果を定量化しましょう。

「先月より売上を上げる」では、具体的な目標設定も分析もできません。「問い合わせ数で、先月比5%増を目指す」など具体的に数値を設定することで、取り組むべき施策も検討しやすくなります。

目標を設定するときは、現実性のある数値に留めることがポイントです。現状との差が大きすぎれば現実味がなく、関係者のモチベーションを下げるのみで終わってしまいます。容易にクリアできる程度の目標も、PDCAサイクルを回す意味がなくなるため、「実現性がありつつも達成には工夫が必要な数値」を設定することが大切です。

結果を焦らない

PDCAサイクルは導入してすぐに、効果や結果が出るものではありません。焦らずに効果や結果が表れるまで見守りましょう。PDCAサイクルは、何度も繰り返し行い続けていくものであり、積み重ねていくことが重要なのです。

求めている結果がすぐに表れなくても、焦ったり諦めたりせず継続していきましょう。

何度繰り返しても「うまく結果に表れない」という場合には、計画の立て方やCheck項目、Action方法の見直しを行い、アプローチ方法を変えるのも効果的です。

常に正しい情報を確認

PDCAサイクルをうまく機能させるためには、常に正しい情報を確認し、現時点での目標達成率などもリアルタイムで把握しておくことが重要です。

進捗状況や達成率を普段から把握できていないと、期日間近になってから駆け足で対応しなければならない状態になります。

しかし、営業活動ではPlanの実行だけでなく収集したデータの入力や蓄積、管理、リストアップなど付随する業務が多くあり、効率化も営業活動における課題のひとつです。

営業活動の効率化や業務負担軽減を図り、PDCAサイクルを回すことなど、本業へ注力できるような環境づくりも重要な成功ファクターになります。

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まとめ

PDCAサイクルは、営業活動の行動指針や目標達成率向上などに役立つ方法のひとつです。

ほかの管理手法であるOKRやOODAなどとも親和性が高く、さまざまな組み合わせで取り入れている企業が多くあります。

PDCAサイクルの活用を成功させるには、導入のポイントを意識することが大切です。ツールなどもうまく活用しながら、営業活動における課題解決に役立ててはいかがでしょうか。